
ブルーノ コンサル
Bruno Consul
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労働経営コンサルタント
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労基法と民法の損害賠償
ここでは労基法と民法の損害賠償についてのお話です。それには、まず労基法と民法の違い・考え方について知る必要がるので、概説する。労基法は「強行法規」であり、罰則が規定されているが、その罰則は、行政(国)が罰則金として企業に対して科すものであり、労働者への直接的な「利益回復」には繋がらない場合がある。これに対し、民法は「損害賠償や慰謝料」等の請求が可能となり、労働者への直接的な「利益回復」に繋がる点に於いて「大きな違いがある」事に注意する必要がある。
簡単に言うと、行政(国)によって取り締まられる労基法には罰則規定があり、その規定の罰則が最大限のものになる。
例えば、労働賃金の未払いとして労働基準法第24条違反(賃金支払いの5原則違反)は罰則規定、労働基準法第120条により30万円以下の罰金となる。しかし、この30万円は「労働者に支払われるものでは無い為、労働者への直接的な「利益回復」には繋がらない。(大原則として、会社は実労働に対しての対価の支払いは絶対である)
つまり、企業は労働者へ賃金の未払いがあった場合で、労働基準法違反として刑事処罰された場合は、最大で30万円の罰金が科せられる事になるが、その罰金は行政(国)に支払う。労働者には、未払いの賃金を支払う事になる。
次に民法の場合を見てみよう。民法の場合は「訴訟」について理解する必要がある。労働者から「賃金未払いの訴訟」を起こされた場合。
1・当然に労働した分の賃金は支払う事になる。
2・支払いが遅れた事による「遅延損害金」の支払いを裁判所から命じられる。(状況による)
3・遅延損害金の利率は、退職前(会社を辞めていない在職中)の場合「5〜6%」・退職後「14.6%」が原則
4・賃金未払金の状況により「付加金」が加算される事になる。(付加金とは事業主への未払いにおけるペナルティー)
付加金は裁判所の裁量によるものが大きい為、最大で未払金と同額(例えば50万円の未払金があった場合で、その未払いが悪質であると裁判所が判断した場合、同額の50万円の付加金が加算され「50万円 + 50万円」 = 100万円の支払い)となる場合がある。
尚、労働者が会社へ「不当行為」を理由とする「損害賠償請求」「慰謝料請求」をすることも考えられる。
民法の場合は、判例法理「過去の類似事件等の裁判例の蓄積により形成された考え方」で判断される事になる。
これが先に概説した、労基法は「強行法規」であり、罰則が規定されており、その罰則は、行政(国)が罰則金として企業に対して科すものである。これに対し、民法は「損害賠償や慰謝料」等の請求が可能となり、労働者への直接的な「利益回復」に繋がる点に於いて「大きな違いがある」と言うことの違いである。(労働対価の支払いは「労基法」「民法」共に絶対原則)
会社は、労基法と民法の違いを理解し、労基法の違反があった場合は、速やかに法の規定する趣旨に従い「是正措置」を行い労働者への違法を正す事が必要である。(そもそも論として、法違反をしないのが大原則である)
労基法での対応の内で済むものならば、罰則金の支払いが最大であるが、民法での「訴訟」に発展した場合は、遅延損害金・付加金・損害賠償・慰謝料請求等に発展する事で、多額の支払いが発生する事を考えれば、民事的に訴訟にならないように、関連法規について違反のないように十分注意しておかねばならない。
ここでは、直接的な金銭についての企業のあり方と損失(労基法と民法に於いての法違反)について話しているが、労基法違反による「企業実名公表」ともなれば、「企業的損失は計り知れない事になる」点について、会社は最大限の「リスク」と認識すべきである。
※上記説明の中で「利益回復」と言う言葉を使っているが、誤解を招く恐れがあるので、極端な場合として事例を話しておく。
労基法で法違反に問われ、罰則金が会社に科せられた場合でも、会社は労働者に未払い賃金を「支払わなかった」事例も存在する。その場合は、文字通り労働者への「利益回復には繋がらなかった」と言えよう。しかし、後の民事的解決として労働者が「訴訟」を起こし、判決により労働者へ「支払いがなされた」事で労働者の「利益回復」がなされた事案も存在する。
我が国における労働問題は多岐にわたり、複雑化した事案も多い。よって、一概に全てを断定することは非常に困難であり、その難しさが労働問題の解決の遅延を生んでいることも事実である。
企業はコンプライアインスの遵守に一層励んで頂き、労働問題に発展しないような経営をしてもらいたい。
その為には、コンサルタントや士業の「力」を有効に活用するのも経営の一手段であるという事を考えてはどうだろうか。